【柳井 正】 経営者になるためのノート

 

本書は、ユニクロを世界的なSPAへと成長させた著者が、ファーストリテイリングの成長を早めるために社内に経営者を200人つくろう、とはじめた社内研修用のテキストです。

ですから、ユニクロの社員向けに書かれています。

 

しかしその内容は、社畜ではなく、経営者視点を持って働きたい人なら、誰にでも役立つでしょう。

いいかえれば、やらされ仕事をこなすだけで不満いっぱい、ストレスに押しつぶされそうな人ほど、手に取って読むべき一冊だということです。

働くことに対して意識を変えることが必要なときに役立つからです。

 

たとえば、経営者に必要な4つの力が、冒頭にでてきます。

  • 変革する力
  • 儲ける力
  • チームを作る力
  • 理想を追求する力

これらについて、さまざまな視点から、経営者として大切にしてほしいことが本書にまとめられています。

 

 

柳井正 経営者になるためのノート
柳井正 経営者になるためのノート

 

 

第1章の変革する力では、

  1. 目標を高く持つ
  2. 常識を疑う。常識にとらわれない
  3. 基準を高く持ち、妥協とあきらめをしないで追及する
  4. リスクを恐れず実行し、失敗したらまた立ち向かう
  5. 厳しく要求し、核心をついた質問をする
  6. 自問自答する
  7. 上を目指して学び続ける

という目次が示されています。

 

当たり前じゃん、と思った方も多いでしょう。

しかし、これらをきっちりとやっている人、できている人がどれだけいるでしょう?

 

第2章の儲ける力ではこんな感じです。

  1. お客様を喜ばせたいと腹の底から思う
  2. あたり前のことを徹底して積み重ねる
  3. スピード実行
  4. 現場・現物・現実
  5. 集中する
  6. 矛盾と戦う
  7. 準備する。しかし固執するのは計画ではなく、成果である

最後の計画より成果に固執せよ、というのも、とかく計画にこだわりがちな日本人には耳が痛いところです。儲ける力とは、柔軟な思考と対応によって支えられているということでしょうか。

 

第3章のチームを作る力ではこうです。

  1. 信頼関係を作る -それが始まりであり、全てであるということ-
  2. 全身全霊。100パーセント全人格をかけて部下と向き合う
  3. 目標を共有し、一人ひとりの責任を明確にする
  4. 任せて、評価する
  5. 期待し、長所を活かす
  6. 多様性を積極的に肯定する
  7. 勝ちたいと誰よりも強く思い、自己変革を続ける

任せて評価する、多様性を積極的に肯定する、などは、わかってはいるけどできない人が大勢いる部分ですね。

 

ダイバーシティとかLGBTの受け入れとか、社会が成熟し複雑化する中で、性別や嗜好などで人を区別したり差別したりすることを少なくしようという動きが活発化しています。

たとえば、同性婚について欧米で法的に認められつつあります。そのほうが経済面でもメリットがあるからでしょう。

日本では婚姻届けを出していない関係ではさまざまな補助や福利厚生を受けることができません。これが同性同士(つまりLBGTの方々)になると、さらに厳しくなります。

ところが、欧米企業の経営者のなかには同性婚している方がいたり、結婚こそしていなくとも同性のパートナーとして生活を共にしている方がいます。

これは、労働関係のコンサルティングを行っている方から聞いた話ですが、そんなグローバル企業の経営者が日本支社にやってくるとなると、日本の法律と慣習のもと、いままで受けていた福利厚生を受けられなくなるため、日本に来ることを拒否するのだそうです。

 

第4章の理想を追求する力では、使命感について語られています。

  1. 経営者にとっての使命感
  2. あるべき使命感
  3. ファーストリテイリングの使命と、心にとめてほしいこと
  4. 使命感がもたらしてくれるもの
  5. 使命感の実現を脅かすものと戦う
  6. 危機に際しての経営者の行動
  7. 理想企業を目指して、人生と対決するようにして生きる

使命感というものを、本当に自分のものにすることはとても難しいです。

標語のようにかっこいい言葉をかかげることは簡単です。

その言葉が自分の思考や行動に浸み込んで、はじめて使命感を得たといえるのではないでしょうか。

 

とくに、使命感の実現を脅かすものと戦う、には、官僚主義的になっている事柄を打破しなければならないと書かれています。

  • 計画立案と数値分析ばかりで、現場には上から目線で一方的に指示を出す
  • 自分で問題を発見せず、人の報告任せで判断する
  • 報告用の数値づくりに一所懸命になる
  • お客様用ではなく、会社の偉い人や上司、あるいは本部を見て仕事をする
  • 優先度ではなく、自分のやりやすい仕事ばかりをする
  • 評論が多く、実行しない
  • 失敗を極端に恐れて、挑戦を避ける
  • 前例主義的な意思決定をされた商品や商売が多くみられる
  • 全社最適ではなく、部分最適が横行する

これらの指摘を読んで、まったく心当たりがないという方はいないでしょう。

多かれ少なかれ、官僚主義的になっている人のほうが多いはずです。

 

柳井正 経営者になるためのノート

 

本書は、ノートです。

読んで、線を引いて、余白に書き込めるようになっています。

また、各章には、セルフチェックページがつくられていて、自分なりに書き込むことができます。

 

ですから、何度でも読み返し、そのたびごとに感じたことを書き込んだり、自分自身の仕事のやり方を見直すことができるようになっています。

今や世界的なブランドとなったユニクロ柳井式の思考法を取り入れることができますので、長く手元に置いておきたいと思います。

 

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