【ロバート・チャルディーニ】「PRE-SUASIONープリ・スエージョンー :影響力と説得のための革命的瞬間」

PRE-SUASION ープリ・スエージョンー:影響力と説得のための革命的瞬間」読了。

 

著者は、影響力の研究の大家であるロバート・チャルディーニ博士。

 

ロバート・チャルディーニ博士の顧客には、グーグル、マイクロソフト、コカ・コーラなど、グローバル企業が名を連ねています。

 

ロバート・チャルディーニ博士による影響力とは、販売促進のために使われている、様々な心理学的、行動学的、認知科学的なテクニックのことです。

 

本書では、顧客が財布を開きやすくなるためには、PRE-SUASION(プリ・スエージョン)、つまり下準備が重要であると書いています。

 

では、下準備とは?

 

販促における下準備とは?

チャルディーニ博士が長年にわたって研究してきた影響力とは、モノを売るプロたちが、どうやって消費者を落とし、財布を開かせているのかということ。

 

相手に「YES」といわせるノウハウやテクニックには、さまざまありますが、チャルディーニ博士は、これらを体系化しています。

 

下準備とは、最初に提示するものが、次に提示するものへの相手の受け止め方を変える、ということです。

 

たとえば、はじめに大きな、ありそうもない数字を出すと、請求書の値引き交渉がなくなるとか、レストランの名前に数字が入っている場合には、大きな数字のほうが、一人当たりの売り上げ単価が上昇します。

 

ほんとに???

 

と、思ったあなた、チャルディーニ博士の本の中身は、すべて学術的に研究され、検証されたことばかりなので、すでに証明されたことです。

 

ところが、わたしたちはそんなテクニックのことを、ほとんど知りません、よね?

 

効果のある販促テクニックは隠したい

販促テクニックは、悪徳商法にも使われています。

 

「あなたは〇〇について、不満(不安)を感じたことはありませんか?」

 

というような質問を目にすることはありませんか。

 

ネガティブな質問を最初にすることで、不満や不安にスポットライトを当て、その不満や不安を解消するための商品やサービスを紹介し、購入させるのです。

 

人は、ある可能性が正しいかどうかを判断するとき、ハズレではなく当たりを探します。

 

「あなたは〇〇について、不満(不安)を感じたことはありませんか?」

 

という質問に対して、

 

「うんうん、不満はある、いっぱいある」

 

と自分のなかの不満だけを見て、その中から体験や経験を探そうとします。

 

不満や不安、恐怖に対して、人が多額のお金を出すことは知られています。

 

売り込みのメールやランディングページの最初に、

 

「あなたは〇〇について、不満(不安)を感じたことはありませんか?」

 

と書いてあったら、注意しなければならないのです。

 

ネットショップの壁紙が売りたいモノを連想させることも

ネットショップのトップページの背景、つまり壁紙が、売りたい商品を連想させていることもあります。

 

本書のなかには、トップページの壁紙をふわふわした雲の画像に変えると、柔らかいソファの販売が増加したという事例が紹介されています。

 

画像が連想させるイメージによって、売りたいモノを売ることができるというのです。

 

しかも、ネット上のバナー広告にいたっては、繰り返したくさん見せたほうが、好感度があがるのです!

 

これは、人間の脳が、バナー広告を情報として意識していないため、広告そのものに対して反感を持たないからであって、記憶されていないことが効果を生み出すということが指摘されています。

 

広告が表示されることに対する嫌悪感はあっても、広告を個別に、これはA銀行、これはBゲーム、これはCショップのようには認識していないからこそ、反感も嫌悪感も起こらないために、広告の低減効果がないのです。

 

Googleが「広告ブロックするユーザー」から料金を回収

Googleは2018年4月16日(現地時間)、広告ブロックを利用しているユーザーから収益を回収するための新しいツール「Funding Choice」を正式に提供すると発表しました。

 

世界のネット広告をコントロールしているGoogleにとって、広告をブロックされると2つの弊害があります。

 

ひとつは、自社の収入が減ってしまうこと。

 

もう一つは、広告収入によって成立しているコンテンツサプライヤーの収入を確保しなければ、サービスを継続できないという理由があります。

 

わたしたちが普段から利用している無料のサービス、レシピサイトや情報提供サイトの売り上げがなくなると、いずれそれらは消滅します。

 

今回、Googleが発表したFunding Choiceは、広告をブロックしているユーザーに対して、コンテンツへのアクセス制限を3段階から選んで設定してもらい、広告ブロック機能の解除か、Googleの発行する「広告削除パス」の購入を促す機能をサイトに設定できるツールとなっています。

 

ただし、1番軽い制限は、注意喚起のメッセージを表示するだけのものになるようです。

 

コンテンツには制限をかけていないので、広告ブロックをしている訪問者でも右上の×をクリックすれば自由にコンテンツにアクセスできます。

 

詳しくはこちらをご覧ください↓

https://gigazine.net/news/20180417-google-funding-choice/

 

「広告を少しは見てください」というのが、Googleの言い分だと思います。

 

専門家の研究結果からは、脳が認識していない広告ほど効果が高いわけですから、どんな形であれ広告は見せたいわけです。

 

ネット同様、広告がなければテレビ(民放)も成立しないので、売りたい企業と消費者との微妙な関係はこれからも続きますね。

 

騒音や教室の飾りが成績低下の原因に

道路脇や空港近くの家や学校の場合、つねに騒音が入り続けています。

 

「なれれば大丈夫」

 

という人も多いと思いますが、このような環境騒音は、認知的作業をする能力をあきらかに低下させているのです。

 

おそろし~。

 

これもすでに証明されていて、騒音のある学校に騒音抑制材を設置すると、成績が急上昇したというのです。

 

日本では、こういう対策にはお金が使われていないと思うので、検討してほしいと思います。

 

さらに、教室の飾りや張り紙などが、授業に注意を集中することを阻害している場合もあります。

 

視覚情報は、脳のなかで最も信用されている情報であるため、背景にある情報によって、集中を促す場合もあれば、気をそらす場合もあります。

 

子どもたちがいつも騒々しい教室というのは、集中できない何かが背景に貼ってある可能性が高いです。

 

ホロコーストと杉原千畝の家庭環境

ナチスからの迫害から逃れるユダヤ人の命を救った杉原千畝(すぎはらちうね)さんは、映画にもなったことから、広く知られるようになってきましたが、チャルディーニ博士は、なぜ杉原千畝という外交官がユダヤ人にビザを書き続けたのか、研究していました。

 

ごく普通の外交官であった杉原千畝さんが、日本政府の方針に逆らい、自分の将来を捨ててまでユダヤ人にビザを書き続けた理由として、チャルディーニ博士は、家庭環境をあげています。

 

杉原の父は、税務署の職員として朝鮮半島でしばらく働いた後、税務署をやめて家族を呼寄せ、旅館をはじめます。

 

このとき、両親が、困っている人を助け、食事や宿を提供する姿をみて、千畝自身は大変影響を受けたと後に語っています。

 

家族のなかに、さまざまな背景をもった外部の人間を迎え入れる環境で育つと、家族の意識が拡張されて、他人であっても親戚であるかのような反応を見せます。

 

この意識によって、杉原千畝さんが政府の命令に背いても、人としてやるべきことをやるという決意ができたのではないかと、チャルディーニ博士は推測しています。

 

同盟国の要求をはねつけた日本政府

杉原千畝さんがビザを与えたユダヤ人は、何千人にものぼり、日本の支配地域にはユダヤ人難民が集まりました。

 

1940年(昭和15年)9月27日に、日本は、ドイツ、イタリアとの間で日独伊三国同盟を形成しており、ドイツからは、日本政府にユダヤ人虐殺の圧力がかかっていました。

 

わたしたちは、日本でユダヤ人が虐殺されたことはない、と知っています。

 

しかし、戦争を目的とした国際同盟関係において、相手国の言い分に譲歩することは大いにあることです。

 

なぜ、日本政府はナチスの要求を拒絶し、終戦までユダヤ人を保護し続けたのでしょうか?

 

このときのキーワードが、ラビ・カリシュ(ユダヤ人コミュニティの指導者)が日本政府からの質問に答えた言葉でした。

 

「なぜ、わが同盟国のナチスは、これほどあなた方を憎むのですか」

 

「なぜなら、私たちがアジアの人間だからです。あなた方と同じく」

 

この言葉によって、日本政府は、ユダヤ人に対して親近感、類似性を見出し、ユダヤ人を「仲間」として認めたのでした。

 

チャルディーニ博士の研究の中でも、日本人と日本人が起こした反ホロコーストの動きは、かなり不可解だったようです。

 

下準備には注意と連想が大事

本書における下準備とは、注意をどこに向けさせるのかということが大事だと指摘しています。

 

注意を、目的の方向へ向けさせると、そこから連想が働き、意思決定に影響を与えるということです。

 

ドイツ語の歌が流れているとドイツワインが、フランス語の歌が流れているとフランスワインが売れるように、販売する側が、意図をもって下準備をすれば、消費者の決定に影響を与えることができるのです。

 

とくに最近の広告では、ネットを中心に認知科学の研究などがすすみ、これらの研究結果を生かして広告展開が行われていることも珍しくありません。

 

私たち消費者は、販売促進のノウハウを知ることで、悪徳商法などから身を守らなければならないときに来ていると感じました。

 

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